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まちにハイライトする

書いた人 稲葉滉星

PLACE  NATURE ATUDIO

Project    Route 7 Project
私たちのチームでは、ここ 2 年ほど神戸市バスの 7 系統という、神戸市の中心三宮から兵庫区北部や神戸の B 面と言われる新開地などを通り神戸駅に終着するバス路線のブランディング企画「Kobe City Bus Route � Project(略称:ルートセブン )」を行っている。神戸市交通局の皆さんも面白がって賛同、協力してくださっているが、お助けいただきつつ、できるだけ民間 ( それも沿線の皆さん ) のパワーを集めてコツコツとやっている企画である。
ルートセブンで具体的にやっていることは、もしご興味があればリンクを見てみていただきたいが、MAP を作成したり、動画をつくったり、スタンプラリーをしたり、マルシェをしたり、、、と様々なものを「7 系統沿線」という切り口で展開している。https://koberoute7.official.ec/

このプロジェクトを通して私たちがしたいことは、「ハイライト」することによってバス沿線という街の新しい地域単位を生み出し、魅力を再発見することである。「沿線価値」と聞くと、大手鉄道会社が線路沿いに魅力的な街をつくる活動を思い浮かべる。そこには沿線に土地を持っていてその土地の価値を上げる、行きたい理由を増やし乗降客数を増やすといった、利益に直結する経済の力がある。そして、既存にあるものももちろん活用しながらではあるが、「何を新しく沿線価値とするか」を生み出そうとする。

一方で路線バスの沿線は、意識されたことがあまりないように思う。少なくとも友人と「私○○バス停の近く」「○○系統が走っている」という会話はしたことがないし、されたこともない。愛知、兵庫、東京と住んできたが、そのどこでもない。人口減少の文脈から、市営バス自体のイメージアップや利用増進のための活動はあるようだが、バスが走る街のことを考えるような解像度ではない。

ルートセブンではまず、「バス路線」を私たちが主張した。本の出版と同じように、この路線がおもしろい、とシンプルに MAP を描いて表明してみたのだ。すると、実は知人が 7 系統ユーザーだったり、この場所にこんなお店があるよ、と教えてくれる人が現れたり。沿線にあった “自分のハイライト” をみんなが持ち寄って、私たちのつくった「7 系統沿線という本」を “汚し” はじめた。

ここから先はまだまだ道半ばだが、ルートセブンは、この “汚して” いく行為を大切にしていきたい。これまでみんなが心の中にしまっていた「ハイライト」を集めて、沿線が「受験生の英単語帳」になっていく。そして、マークだらけの 7 系統をしげしげとみんなで眺めたり、新しく街を訪れる人に見てもらったりするのだ。

大切なものを集めていくと、集合自体がプライドになる。沿線はその時本当に「価値」が上がるのではないだろうか。

この記事を書いた人

稲葉滉星
園芸家
神戸生まれ。園芸家歴20年あまりの人。サッカー好き。得意な仕事は造園のコンセプトメイキング。