Placemaking Lab for Livable Cities
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プレイスメイキングは一日にしてならず

私にとってプレイスメイキングにはじめて意識を向けたのは東遊園地の社会実験URBAN PICNICでした。2015年からはじめて、公園の工事がはじまるまで6年間つづいたこの社会実験では、園地に芝生を敷いたり屋外図書館を開いたりといったハード的な実験と、さまざまなプログラムを実施するソフト的な実験がまざりあったものでした。

いつも紆余曲折はつきものでしたが、何年も公園で経験を積むことで、どんな風景があれば人が滞在してくれて、どんな体験があれば愛着を深めてくれるのか、かなり学んだつもりでした。

自分の中に育ちはじめた「プレイスメイキングはこうするもんだ」といった小さな固定観念が崩れたのは、最近グラングリーン大阪として広大な芝生エリアがオープンしたうめきた2期のエリアでチャレンジした、UMEKITA BASEでした。

2019年の当時、グランフロント大阪のあたりから梅田スカイビル方面に向かう際には、梅田貨物駅跡の大きな再開発エリアのなかを通る、一本の通路を使うほかに道がなかったのですが、その通路沿いの一角に、うめきた2期開発の先行実験として、小さなステージとカフェコーナーを併設した場づくりを試行する機会をいただいたのです。

道行く人たちのスピード感は、公園では経験したことのないものでした。梅田スカイビル方面へ、あるいは大阪駅方面へ、それぞれがめざす場所に向かって一刻も早く歩いて行きたいという気分にあふれた通路では、立ち止まって滞在利用するにははっきりとした理由が必要で、ただ心地のよい場所だというだけでは立ち止まる理由になりませんでした。

このため、「早く通過したい」と通過していく多くの人々ではなく、まずは地域に根ざした方々に具体的な目的をもって訪れて頂くような方向へと切り替えました。東遊園地という公園での経験のなかで、堅持するところと、場所によってカスタマイズするところを見分けていく経験は、このようにはじまりました。

Street Table Sannnomiya K-106 LIVEの模様

その後に挑戦したStreet Table Sannnomiyaでも、NATURE STUDIOでも、それぞれ人々が滞在したくなる理由や設えは違っていて、リバーワークスにとって大きな経験値となっています。仮説を立てて、小さな実験と振り返りを繰り返しながら、その立地にあったプレイスメイキングの方針を立てていくことも、ようやく板に付いてきたようです。

改めて一般人としての自分の行動を振りかえっても、都心の公園と駅前空間、地元の住宅地では、時間の使いかたが違います。口には出さないし出せないけれども、その場所でどんな風に過ごしたいのか、人々の頭のなかにその答えはあるような気がしますし、そのイメージと私たちの実験が重なったとき、人々は強い愛着を持てるようになるのだと思います。

リバーワークスはこれからもその答え合わせを続けていきます。と同時に、答えを探している方々のお役に立てればと考えています。

文/村上豪英