Placemaking Lab for Livable Cities
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私が初めて作った仮設物「URBAN PICNIC 2015」

今回は、「設え」の観点からプレイスメイキングについて、書いてみたいと思います。
わたし、実は何年かは、ちゃんと建築の設計をやっていました。木造の現場が多く、上棟が終わった軸組(柱と梁)の状態の現場をみるのが好きで、いつも「ここから、壁とか窓とかがつくのか〜」と残念な気持ちになっていました。いろんな意味で落ちこぼれの建築士見習いを一生懸命やっておりました。そんなくだらない私のこだわりを、解消してくれたのが、社会実験の際につくる「仮設物」でした。

今回は私が初めて作った仮設物、東遊園地の「URBAN PICNIC 2015」のことを振り返りたいと思います。


プランをするための条件はシンプルで、

・期間は2週間

・本棚がある

・カフェカウンターがある

・芝生広場をつくる

この当時、気をつけたことはだいたい3つありました。

その1 なるべく捨てない

2週間でなくなってしまうものなので、なるべく再利用した、或いはできる材料で作りたかった。いろんな人に、相談して行き着いた構造が、建築現場で使われている「足場」でした。足場材は基本リースで、次の現場で使われます。
たまたま、代表の村上が建設会社の社長であることから、「足場屋さん」と容易に会うことができ、「祭りのやぐらは、うちらが作ってますねん!だいたい雰囲気はわかります。」と2つ返事で、受けてくれました。
それから、番頭さんに足場の部材の規格、接合部の種類などを細かく教えてもらい、なるべく規格で作れるように図面をかいてできたのが、5.5m角の四角い構造物でした。

本棚の棚板も、ヒアリングを進めているうちに、「六甲山の間伐材」が、製材されずに、倉庫にあることがわかりました。製材は、私たちがして、棚に加工し、社会実験の後は、間伐材の活用をされている方に引き取ってもらい、また何か違うものに使ってもらうということで、話が出来ました。本棚のテーマを貼ったり、ブックエンドは、長田にある木材やさんに、プレカット材※の柱の端材をもらって、活用しました。

※プレカット:木造住宅建築の際、柱や梁を現場での施工前に工場などで原材料を切断したり接合部の加工を施しておくこと。

芝生も北野のインフィオラータの期間のあと、その一部を譲り受けて東遊園地で使わせてもらいました。トラックで何回も往復し、舗装された公園の広場に、土を2㎝ほど入れ、12m角の小さな芝生広場を作りました。実はこれが本当に大変でした。

その2 みんなが主役

カフェカウンターに立った時の、お客さんとの目線の高さにこだわりました。
カウンター内部で、少し上からの目線になるのを避けたく、使う人みんなが同じ目線で、コーヒーの購入や提供できたり、本の寄贈を受付けできるようにしました。

仮設物のまわりで、いろんな人が、同じレベルで活動をしていて、その風景の一部となり、それぞれが主役になるようにしたいと考えました。


その3 なるべく、日常を邪魔しない

今まで公園を使っていた(特に通勤などの日常使い)方が、突然できた仮設が「邪魔だ」と感じない配置を心がけました。通勤時に、いつも通っていた道が、仮設物があるために、回り道をして目的地に向かわないけないとなると、いい気がしないと思います。

通勤の人の導線、昼休みのお弁当を食べる人の場所など、事前にその場所の活動を観察して、配置は決定しました。

大きく3つのことを、大事にしながら、条件を整理してできたのが、URBAN PICNIC 2015の第1回目の仮設物です。

「壁も、窓もない」柱と梁だけの仮設物は、わたしのくだらないこだわりを満足し、2週間の役目を果たし、無事に会期を終え、多少のゴミをだしましたが、ほぼ再利用することができました。

イベント時に使うテントや、ステージなども、何度も使えるエコでよくできたアイテムだと思います。でも、なんとなく「イベント」の風景になってしまいます。日常と非日常の間の「社会実験」の風景をつくるために、それではない仮設物にこだわってきました。

仮設を作る時に、それに関わる人たちが、その様子をSNSで拡散してくれたり、開催期間中に何度も見にきてくれたりしました。手間暇かけることで、作っていく過程での拡がりや効果もあったかなと思います。

プレイスメイキングは、プロセスと結果をできるだけ多くの人と共有することも重要だと感じます。

まだまだ、たくさんの仮設物をつくってきたので、次回の執筆当番の時に別の現場を振り返りたいと思います。

文/岩田晶子